セントノア病院

こころのこもった医療と介護を実践し、患者様の「安全の場」づくりに全力で取り組んでいます。
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  • 2016年5月1日 『閑話休題』

    近頃、明るい話題がとても少ない。新聞やテレビを見ていても暗い話題ばかり。期待されたアベノミクスも発想と掛け声は良かったのに実績は今一つ。景気も相変わらず横ばい。安倍さんは、一昨年に続いてまたまた介護職の給与を1万円アップさせるのだそうな。そして保育士の給与も最低でも6千円以上アップさせるとか。本当に掛け声だけは良いのですが…。

    「笛吹けど踊らず」はどこの世界にもありますが、国民を躍らせたいのなら、自ら陣頭指揮をしなければそう簡単には踊らないと思いますよ、総理。

    さて、大笑いは出来ませんが、ニヤっとする程度の話題をひとつ。

    中国人の爆買は有名ですが、もう一つ、中国には世界に冠たる技術があります。それはブランド品の偽造技術です。ブランド品の偽造は当然、違法行為ですから処罰されます。これは笑えません。では、商標登録はどうでしょう。これも中国には日本の企業は散々泣かされています。

    ではその商標登録の話をしましょうか。皆さんは「フランク・ミュラー」と言うブランドをご存知でしょうか。そうです。大人の男性の憧れの一つ、スイスの高級腕時計のブランド名です。

    実は、その「フランク・ミュラー」と、大阪の時計メーカーが商標登録の裁判で争ったのです。もちろん本家は『フランク・ミュラー』。そして大阪の時計メーカーが登録した商標は『フランク・三浦』。

    どうです。パロディとしても、語呂合わせにしても、面白いと思いませんか。

    ところが、ユーモアの欠片もない特許庁は、「全体の語感が似ていて紛らわしい」として、商標を「無効」と判断してしまったのです。当然「三浦」は黙っていません。さっそくそれを不服として知財高裁に提訴したわけです。

    とにかくこの二つの腕時計は、中身はともかく外観はとてもよく似ているのです。さあてさて裁判所の判断はいかに…。

    『フランク・ミュラー』はスイスの時計師が自分の名をつけて立ち上げたブランド。超高級時計として世界中に知られ、価格も100万円を超えるものが多いのです。一方、『フランク・三浦』はごく普通の時計の製造や輸入販売が本業の会社が製造し、価格も4〜6千円程度。いくらちょっと見が似ているからと言って虎と猫を比べるようなものです。結果は、『フランク・三浦』が本家に勝訴しました。

    知財高裁は「連想はするが明らかに日本語の三浦が含まれる」「多くが100万円を超える高級腕時計と4〜6千円程度の『三浦』を混同するとは到底思えない」として商標登録できると判断したのです。

    もともと『フランク・三浦』のホームページでは、「完全非防水」「ノーマル球面プラスチックを採用」等々、パロディとしか思えない文言が並び、それがまたジワジワと人気を呼んでいたそうです。

    偽造や模造品は駄目ですが、思わず笑っちゃうような『優れたパロディ』なら、あのいかめしい「知財高裁」も咎めることは出来なかったそうな。

    誰も笑わなかった社長のジョーク。そこから生まれた「フランク・三浦」。スイスの本家は面白くないでしょうが、どうぞ苦笑いで済ませて下さいな。

     

     常務理事・事務局長 瓦井 洋

  • 2016年4月1日 『最高裁判決異聞』

    平成19年12月7日、愛知県大府市で、認知症で徘徊症状があり、要介護四の認定を受けていた男性が電車にはねられ死亡した。事故後、JR東海と遺族とで賠償について話し合ったが合意に至らず、JR東海は「運行に支障が出た」として遺族に720万円の損害賠償の訴えを起こした。この事件の一審判決(名古屋地裁)は有罪。亡くなった男性の妻と長男に720万円の賠償を命じた。そして二審の名古屋高裁。長男の責任は認めなかったものの、妻の責任は一審に続き、認定。359万円の支払いを命じた。このニュースは、全国の認知症患者を抱える家族にかなりのショックを与えましたのでご存知の方も多いと思います。

    当時、この一、二審の判決は、家族のみならず世間をも震撼させ、巷は大ブーイング。私も認知症患者の生活実態や行動実態をよく知る一人として、一審、二審の裁判長の判断にはかなりの違和感を覚えましたし、この欄でも、訴えを起こしたJR東海や、二人の裁判長の認知症患者に対する見識のなさを強く批判したものでした。

    そして今年。2016年3月1日。この事件の最高裁での判決が言い渡されました。

    前述のようにこの裁判は、責任能力のない認知症男性(当時91歳)が、徘徊中に電車にはねられ死亡したという事故で、家族が鉄道会社に、賠償責任を負うのか負わないのかが争われた上告審でした。

    結果、最高裁は二審の名古屋高裁の判決を破棄、JR東海の逆転敗訴を言い渡したのですが、そもそもこの裁判の争点は、認知症高齢者を介護する家族に監督義務があるのかでした。民法714条では『責任能力のない人が損害を与えた場合、被害者救済として「監督義務者」が原則として賠償責任を負う』と規定しています。ですから、一審の名古屋地裁は「目を離さず見守ることを怠った」と男性の妻の責任を認定。長男も「事実上の監督者で適切な処置を取らなかった」として二人に請求通り720万円の賠償を命じたのです。

    納得のいかない家族はすぐに控訴。二審の名古屋高裁の判決は「20年以上男性と別居しており、監督者に該当しない」として長男への請求を棄却。妻の責任は一審に続き認定、359万円の支払いを命じたのです。

    そして3月1日の最高裁。判決は妻の責任をも破棄。『この事件においては、家族に賠償責任を負わせる根拠が薄い』としてJR東海の逆転敗訴が確定しました。

    この最高裁判決、認知症患者を抱える家族は、とりあえずはホッとしていると思いますが、しかしこの判決で民法714条の規定『監督義務者の賠償責任』が全くなくなった訳ではありません。今回の事例が賠償責任に問われなかっただけ、なのです。つまり賠償責任もケースバイケースという事なのです。

    これからも増え続けるであろう認知症患者に対するこの国の対応は、オレンジプランにみられるように「自宅で介護する」、「地域住民で看る」方針です。この方針が変わらない限り、今回の最高裁判決もたまたまだったと言わざるを得ません。

    『掛け声ばかりの安倍政権、やってることは糠に釘』。

    認知症患者を抱える家族が、家庭崩壊・家族崩壊にならないことを祈るばかりです。

     

     常務理事・事務局長 瓦井 洋

  • 2016年2月1日 『ビアーズ基準』

    何年前になりますか。高齢者には『潜在的に不適切な薬』として国立保健医療科学院がビアーズ基準として世界的に有名な、マーク・ビアーズ博士と共同で「日本版ビアーズ基準」を公開したことをこの欄でお知らせしました。と同時に、当院に入院してくる患者さんの中には、何種類もの薬を、山のように抱えてくる人もいる、という事も書きました。

    そして現在、高齢者が処方される薬に何か変化があったのでしょうか。

    と言うのも、このたび前述の国立保健医療科学院が『高齢患者における不適切な薬剤処方の基準の一覧表』を発表したからです。疾患、病態に関わらず使用を避けることが望ましい薬剤四十六種類と特定の疾患、病態において使用を避けることが望ましい薬剤二十五種類の計七十一種類の薬剤です。

    この発表の後のブログには賛否両論がそれぞれ載っていましたが、私は両手を挙げて賛成したい。

    高齢者が医院や病院に掛かった時の「多種・多剤投与」が問題になって、かなりの年月が経ちます。前述の「日本版ビアーズ基準」は二〇〇八年に公開されました。もう既に八年が経っているのです。にもかかわらず私の眼には「多種・多剤投与」は相変わらずですし、ビアーズリストに載る「高齢者に不適切な薬」などは、その殆どが無視されているようにも思えます。

    そもそも高齢者は薬物を代謝したり排泄する能力が低下していたり、服薬数の増加による多剤併用によって、重篤な薬物有害反応が出やすいとされています。それなのに以前と大した変りがないとは…。

    処方する医者が悪いのか、はたまた処方される側の患者が悪いのか。

    まさか、ビアーズリストの存在を知らないなんてドクターは居ませんよね。この国は超高齢化を迎えているのです。高齢患者を診察し、薬を処方する機会は増える一方のはずです。その先生たちがリストの存在を知らない訳がありませんよね、きっと。

    ともあれ、この日本版「ビアーズ基準」は、『高齢者に対して特に慎重な投与を要する薬』のリストであり、この「不適切な薬剤」を選定するにあたっては、この国の内科学、臨床老年医学、老年精神神経学、臨床薬理学、薬剤疫学の専門家、九名(東日本から六名、西日本から三名。年齢も四十代、五十代、六十代)と、そうそうたるメンバーを選び、これらのコンセンサスを得て作成されたものだそうです。そして、もちろんこのビアーズリストは、医療先進国であるアメリカを始め、ドイツやフランス、カナダや韓国にも存在しています。つまり、この「ビアーズ基準」は、世界の医療先進国において、既に重要なリストとなっており、その根拠は薬剤の選定において、その手法が透明性と妥当性を高く持つため世界各国に広まったと言われているものなのです。いかに信用度の高いリストであるかお分かり頂けると思います。

    是非、このリストを参考にして、多種多剤投与を出来るだけ避け、適切な薬剤投与を。そして適切な高齢者医療を。切に望みます。

     

     常務理事・事務局長 瓦井 洋

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