激動の1年が過ぎ、又、新しい年が始まります。早いもので私が川越セントノア病院を設立して10年目、春日部セントノア病院は7年目に入ります。準備期間を入れれば既に十数年、一昔前にもなりますが、設立を計画した当時は、認知症患者の専門病院は全国でも皆無に近く、適合される法律さえ満足にないような状態でした。そして医学的にさえろくに解明されていなかった認知症は、全国で激増しているにもかかわらず、厚労省内では認知症が精神科に属するのか、はたまた他科に属するのか、真面目に議論されていたという笑えない話もあったそうです。
そんな世相の中での病院設立でしたので、医療スタッフも看護・介護スタッフも、全てにおいて手探り状態でのスタートでした。私は病院を設立するにあたって、私自身の理念・信念だけはどうしても全職員に理解し、共有してほしいとの願いから、長く老人医療に携わってきた実際の経験談、そして医療からも福祉からも邪魔者扱いされ続けてきた認知症患者をどう救うべきか、医療界に席を置く者としてどう向き合うべきかを真剣に考え、その思いのたけから病院設立に至った経緯を何回か聞いてもらいました。多くの職員たちはそんな私の思いを理解と共感をもって迎えてくれました。そして、現在の医学の下、病院として、認知症患者の医療は、看護・介護はどうあるべきかを真剣に考え、議論し、それこそ手探り状態の中で研究をし、勉強をしてくれたのです。
当時の我々も、又、スタッフたちも本当に使命感があり、覇気がありました。そして10年。認知症専門病院としての理想と現実の狭間で悩みながらも、信念をもって患者さんに向き合い、少しずつではあってもセントノア病院の歴史として築きつつあると思ってはいます。が、しかし、人というもの、刻と共に記憶は薄れ、どうしても易きに流れてしまうものです。
「初心、忘れるべからず」「継続は力なり」、賢人と云われる人たちの言葉はいろいろありますが、解っていても実行していくのは難しいものです。少しずつ風化し、マンネリ化していく。そして知らず知らずの内に使命感も信念も薄れ、スタッフからは笑顔も薄れ、機械的な業務だけをこなしていく。
私はこんな病院を、そして病院とは名ばかりの病院をいくつも見てきました。セントノア病院がそんな病院になっては絶対にいけないし、それこそ病院としての存在価値がなくなってしまいます。
病院というところ、年数と共にスタッフも少しずつ入れ替わります。そう、新しい仲間たちが増えていくのです。この新しい仲間たちが、明るい職場で、明るい笑顔で、使命感を持って仕事をしていく病院でなければなりません。
リーダー達よ、設立当初の頃の使命感、覇気を忘れないで欲しい。そして新しい仲間たちにもこの使命感、この覇気を継承するよう指導して欲しい。セントノア病院が認知症患者とそのご家族から、そしてこの世の中から、是非とも必要なんだと言われ続けるために。
常務理事・事務局長 瓦井 洋