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老人性認知症疾患専門病院

201710/1
病院短信

『緩和医療における東西ハイブリッド医療』


前回は認知症に対して現代的医療と東洋医学的医療とのハイブリッド医療について述べた。今回は緩和医療についても、ハイブリッド医療により各自の病態に応じたQOLを維持出来るように検討を加えている。

緩和医療は近年、末期癌患者に対する緩和ケアから始まったといわれているが、最近では早期癌でも診断がついた時点から標準治療と同時に開始すると良いといわれている。さらに癌以外の疾患でも緩和医療が施行されるようになってきた。認知症は生命に直結することはないが、恐怖感やストレスは癌と同様と思われるので、メンタルケアや緩和ケアは早期からの対応が必要と思料される。

癌患者とその家族は早期癌でも癌の恐怖感だけでなく、メディアなどの影響を受けて、癌の三大標準的治療に対する不安感や副作用の恐怖感も強いので、検査や治療を躊躇または拒否する例もある。それらは患者の選択肢の一つであり否定はできない。標準治療を受けた後、これ以上の治療法がないので通院しなくてもよいと癌専門主治医に言われ、見放されたという末期癌例で、漢方外来を受診してQOLの改善が得られた例も経験している。さらに、早期癌と診断されても不安になり、不眠が続いて体調不良になった例では、漢方薬の短期服用にて不眠・不安が改善し、その後標準治療に前向きになったという例もある。

末期癌例で、身体的・精神的衰弱にて治療に消極的な夫と、その介護により心身共に疲労困憊の妻に同じ漢方薬を同時に処方したところ、比較的短期間で同時期頃に回復傾向がみられ、夫は治療に積極的になり妻も夫の介護に前向きになれたと喜ばれた経験もある(夫婦同服)。

癌以外の緩和医療では、指定難病歴二十数年の症例で、合併症の為に漢方二種類の合包処方にて比較的短期間で改善効果が認められた。この患者は改善を喜んでいるが、想定より早い改善にリバウンドの心配で不安になったこともあったという。この様に患者自身の想定よりも改善が早いと、リバウンドを心配する例は少なくないが無用な心配である。これらの漢方薬のように症例や個人差はあるが、短期間で効果的な方剤も多くある。近年は認知症にも抑肝散などの漢方薬も利用されている。

しかし、未だに漢方薬を含めて東洋医学は、古い・科学的でない・反応が遅い・長期服用・苦い・吞みにくい・名称がわかりにくいなどのマイナスイメージが残っている。プラスイメージは、比較的副作用が少なく安全性が高いと言われるが、副作用は要注意である。漢方薬を処方する医師は増えつつあるが、未だに嫌う医師も患者も少なくない。近年は現代医薬品と同様に科学的エビデンスの検討が行われつつあるので、近い将来は現代医薬品の補助や副作用対策としても期待される。

さらに予防医学は重要であり、AIなどを利用して検討されているが、病気になるか否かは不明なので検査で異常がないと経過観察のみのこともある。東洋医学の未病では、検査で異常が認められなくても病名が明確でなくても、何となく不調変調を感じる時期から進行抑制処置をして経過観察を進める。

漢方薬の軟膏も認識は低いが、保険で認められている紫雲膏は火傷・痔核の疼痛・肛門裂傷が適応で、放射線治療による火傷症状や帯状疱疹にも有効な例もある。保険外では虫刺傷・皮膚白癬菌症・爪白癬菌症などに有用な軟膏や、アトピー性皮膚炎・接触性皮膚炎などに有用な軟膏、筋肉痛・関節痛に良い軟膏などもある。漢方軟膏の難点は、臭い・しみる・衣服に付くと落ちにくいなどで、反応にも個人差がある。保険外でも高額ではないので、選択肢の一つと思料される。

医師  黒川 胤臣